こんにちは。前回は、何もしていないと人間の筋力は年々衰え、病気でさらに大きく衰える事についてお話ししました。今回は心筋梗塞を例にとって、運動療法に対する考え方の変化についてお話ししたいと思います。昔は安静、今は運動、180度変わった心臓の治療心筋梗塞は「心臓に栄養を送る冠動脈が詰まってしまって、その血管の栄養する心臓の一部分が壊死する病気」です。1940~50年くらいまで、心筋梗塞を起こしてしまった場合に早期から運動する事は病状を悪化させてしまうと考えられており、まずは安静にすることが治療と言われていました。その安静期間はなんと、2か月間です。約2か月ほどベッド上で絶対安静を強いられていたため、その後立つことすらままならない状態になってしまい、寝たきりになっていった患者さんもいたと思います。1950-60年代には、安静による弊害を予防するために心筋梗塞に対して早めのリハビリをするという考え方に変わっていきました。さらには早期の運動で病気が悪化するわけではないという事がわかってきたため、社会復帰のために運動療法の重要性が認識されていきました。※上に書いた時代はカテーテル治療のような心筋梗塞の緊急治療が発展していなかった為に心筋梗塞の死亡率は極めて高く、まずは命を落とさない事が大事でした。当初の安静はやむを得ない事であったのではないかと思います。治療が進歩するにしたがって救命率が向上し、社会復帰が重要な課題になっていきました。さらに時代が進み様々な研究で明らかになったのは、運動療法は社会復帰を早める事だけではなくもっと幅広く効果があるという事でした。寝たきり予防のためだけではなく心筋梗塞の再発予防の効果があり、さらには心不全含めた心臓病の予防にも効果があるという事が分かったのです。そして、運動療法はさらに発展し広がっていきます。ただの運動療法だけではない「心臓リハビリテーション」リハビリというと運動療法を思い浮かべがちですが、心臓リハビリテーション、通称「心臓リハビリ」は運動療法とはイコールではありません。心臓リハビリは、運動療法だけでなく栄養・生活・精神心理などの方面からも教育や相談をすることで、患者さんに対しての包括的(全体的)なサポートを含んでいます。運動療法だけでなく、多方面からの介入をすることで、より心臓病患者さんの予後を改善するといわれています(予後とは「病気の見通し、余命」などを意味します)。運動療法から発展した心臓リハビリは心臓病の治療の大事な柱とされており、循環器ガイドラインでも強く推奨される治療です。私も心臓リハビリには長くかかわってきましたが、心臓リハビリに参加される方ほど再発率が低い事を肌で実感します。心臓リハビリについてはまた別の機会に詳しくお話しさせていただくとして、運動療法の話に戻します。次回、心臓病の運動療法の実際についてお話しします。