こんにちは。夜中にトイレのために何回も起きてしまう「夜間頻尿」に困っている方が多くいらっしゃいます。夜間頻尿といえば、過活動膀胱や、男性であれば前立腺などの泌尿器科的な原因を思い浮かべる方も多いと思います。確かに泌尿器科的な原因でそうなってしまう方は多く、まず泌尿器科に相談されることが一般的です。しかし、泌尿器科的な原因以外で夜間頻尿になってしまうことがあります。今回は、一見関係のない循環器疾患と夜間頻尿の原因についてのお話しをさせていただこうと思います。高血圧と夜間頻尿、と塩!?文献的に夜間の頻尿患者さんの高血圧症合併率は2倍と言われています (1。あまり関係ないようにみえる「夜間頻尿」と「高血圧」ですが、実は密接に関係しています。その関係の重要なキーワードは「塩」です。人間の体のメカニズムで、『過剰な塩分を排泄するために血圧を上げる』といわれていますが、塩分の排泄は腎臓で尿を作ることで行われています。つまり塩分を取りすぎると、血圧をあげて腎臓の循環をふやし、余分な塩分は尿で体外に排泄するという事になります。塩分を多く摂取すると尿が増えるという事になりますが、それが夜増える理由についてはさらに「食塩感受性高血圧」を考える必要があります。食塩感受性高血圧が夜間頻尿と関係する高血圧患者さんの中でも食塩感受性高血圧という、塩分を取ることで血圧が上昇しやすい患者さん(日本人に多いといわれます)は、特に夜間に血圧が上昇することが多いです。そのような高血圧患者さんにおいては塩分を過剰摂取する→それを排泄するために血圧が特に夜間に上昇→夜間の尿が増えてしまうという事が起こります。食塩感受性高血圧の患者さんの夜間頻尿対策は塩分を控えることが一番です。不十分な場合は、高血圧の薬の中でも尿に塩分を排泄する降圧利尿薬を内服すると、日中に塩分を排泄することができ、夜間頻尿が減るといわれています。さらに心臓病の大きな原因である夜間の高血圧も減らすことができるといわれています。しかし、このようなケースの高血圧において塩分を排出しない血管拡張剤のCa拮抗薬と言われる類の薬を使用すると、降圧剤の作用で日中に血圧が上がらないために日中に塩分排泄が行われずに、逆に夜間尿が増えてしまうことがあると報告されています(2。夜間頻尿と高血圧にはこのような関係があるのですが、そのため高血圧の内服を考える場合、夜間頻尿のこともふまえて薬を使用する必要があります。次回に続きます。次回は夜間尿と心不全の関係についてお話しします。今回は教科書的でない事についてお話ししているため、参考文献を挙げさせていただきます。1. 夜間頻尿診療ガイドライン【第2版】2. Biomed Res Int. 2017 Oct 16;2017:4269875.