こんにちは。前回、前々回と生活習慣の改善と高血圧についてお話ししました。今回は10のファクトの⑤、高血圧の目標値130/80(家庭血圧125/75)mmHgについてお話ししたいと思います。⑤高血圧の人では,年齢に関わらず,上の血圧を130 mmHg未満,下の血圧を80mmHg未満まで下げると,それ以上の血圧に比べて,脳卒中や心臓病が少なくなります血圧は血管の圧力です。圧力が高ければ物理的な負担がかかるため、血圧が高いことで血管は中から傷ついていきます。つまり、高血圧は脳、心臓、腎臓などの血管の役割の大きい重要臓器にダメージを与えていきます。そこで高血圧管理・治療ガイドライン2025では、血圧の管理目標値を130/80(家庭血圧で125/75)mmHgとしています。高血圧は健康に悪いという事は現代人にとっては当たり前のような話ですが、よくよく考えると、血圧が高いとたくさん血が巡りそうなので、それはそれでよいのかもしれないとも考えてしまいがちです。実際に高血圧がいいのか、悪いのか、しっかりとした科学的な根拠に基づかねばなりません。そこで、高血圧の歴史を少しだけご紹介しながら紐解いていきたいと思います。高血圧は必要!?それとも・・・血圧という概念は、1700年代のイギリスで提唱されました。ウマの血管に管を通して、実際心臓から出てくる血液に拍動があり、その圧力が血液を2.5mくらいの高さまで上昇させることが観察され、血圧が実際に可視化されたのです。この測定法は、ウマの動脈に直接管を入れて測定するような方法でした。実際に皆さんが今されているような血圧測定法(腕にカフをまきつけて測定する方法です)は、およそ1900年頃に発明されました。血圧が簡単に測定できるようになったことで、人類にとって血圧という概念が身近になっていったのですが、その当初は全身の細い血管にまで血をいきわたらせる必要があるので血圧は高いことが必要と考える学者さんもいました。しかし血圧が高いことで心臓が肥大してしまうことと腎臓の萎縮があることも研究結果として知られており、高血圧はよくないと考える意見もありました。高血圧が死亡率上昇に関係しているという研究が増えてきてはいたのですが、高血圧は必要なのか悪なのか、実際に結論がでたのは、20世紀も折り返し地点を過ぎた1950年代以降の話です。ある有名な人物と、ある有名な研究がその論争に終止符を打つきっかけとなりました。研究が明らかにする事実、高血圧は心臓病の原因!1945年、アメリカの第32代大統領フランクリン・ルーズベルトが63歳で死去しました。ルーズベルト大統領と言えば、ニューディール政策や第二次世界大戦時の大統領であったことなどが有名ですが、亡くなった原因が300/190mmHgという極めて高い血圧が原因の脳出血であったということも知られています。1948年、有名なフラミンガム心臓研究という非常に大きな研究がアメリカでスタートするのですが、そのきっかけの一つが大統領の死と言われています。フラミンガム心臓研究の結果、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満、喫煙などが心臓血管疾患のリスク因子として明らかになり、ようやく科学的根拠を持って、高血圧が病気であり治療を要する状態であることが証明されたのです。実際にフラミンガム心臓研究の結果、上の血圧が120mmHgより上がるにしたがって脳卒中や心筋梗塞が増えていくことが分かりました。その後、日本を含めた各国でも様々な研究が行われ、高血圧が病気の原因になることが証明されていきました。今のところ、75歳以上の高齢者も含めて130mmHg未満まで血圧を下げることで脳・心血管疾患が減少することが明らかにされています。このような理由があって、日本における血圧の目標値は日本の実情も踏まえて130/80mmHg(家庭血圧125/75mmHg)とされています。ただし、血圧を下げすぎて脳や腎臓の血流を減らしてしまうことで、たちくらみ、めまい、腎障害などが起こってしまうことがあります。低血圧に注意しながら目標血圧まで下げていくこと、家庭血圧を測定して低血圧になりすぎていないかを確認しながら治療することが大事です。